僕という人間
ボクはズルい人間だ
2020年4月初旬
経営する飲食店7店舗を今後の社会情勢の中で継続させるだけの体力が当社にはないと判断して全店撤退閉店
88人いた社員アルバイトへは解雇はしないものの、元々辞めたかった人、辞める予定だった人、辞めてもいい人には辞めてもらう。在籍している限りはもちろん給与を払い続けるが今後飲食業はかなりの窮地に追い込まれ当面の間、明るい未来はないことが予想されることを伝える。
4月時点での想定される赤字額は月に1,500万円だった。半年も経てばあっという間に1億円。この国のように現在の借金を未来に後回しすれば1年くらいは生き延びれるかもしれないが、僕自身、経営者として唯一の借入に対しての個人保証人としてそんなネガティブな借金はゴメンだったし、企業した時に決めた「借金をしてまで経営は続けない」という理念にも反すると思った。
それでもゴキゲンファミリーなんて大層な名前を付けておいて、88人の仕事を無くした事もまた「仕事を永続させる」という最も経営の根本的な理念に反してしまった。
もう経営は辞めようボクには続ける資格もない
そのためにもまずはなるべく誰にも迷惑や借金を残さず会社を畳むことが最大限の降参の形だと考えていた。
それに何よりもボクは経営者を始めてからずっと自分の中で葛藤していた考え、
もしも会社の仲間と自分の家族のどちらかしか助けることができないとしたら会社の仲間の手を取れる経営者で在りたいそれがボクの理想の経営者像であったが、この頃のボクは既に自分の家族の方が大きく大切な存在となっていた。だから借金してまで今の家族との生活を壊したくもなかったのが本音かもしれない。
しかし予定外の事が起きてしまった。
50歳過ぎた経理のおばちゃんの面倒はボクが一生面倒見て行けば良いと思っていたが、88人のうち8人も退職しない人間が残ってしまった。
残った理由はそれぞれだが、従業員がいる限り会社は当然畳めない。給与を払い続けるには何かしら事業を継続しなくてはならない
マイッタ。会社を清算したら坊さんにでもなって贖罪の道を歩もうと思っていたのに、どうやら一度足を踏み入れたこの業だらけの世界は簡単には辞めさせてくれないみたいだ
起業してから17年。飲食業が主になって10年。沢山の出来事があり過ぎて、一緒に居たかった人間が離れ過ぎて、ボクの本音は「従業員に辞める選択があるなら経営者にも辞める選択があっていいだろう同じ人間だ」そう卑屈にも思っていた。
しかしまたしても辞める選択枠は用意されていなかった。
でもなんだか辞められないことを嬉しく思っていた。残された8人のおかげで奇しくも経営者を続けることになり、残りの経営者人生はこの子達のためだけに尽くそうそう自分に誓った。